当教室では大学院統合医科学専攻の演習として、「鴨川統計集会」(Kamogawa Statistical Conference; KSC)を実施しております。
中田 美津子「変量効果モデルを用いた誤差の許容範囲の推定」
同じ量を測定するための異なる方法間の一致を示すアプローチには、Altmanらにより提唱された95%一致区間(95% agreement interval, AI)があるが、範囲が狭すぎることが指摘されてきた。AIの改良法として、標準偏差の推定誤差を考慮した予測誤差(prediction interval, PI)があるが、これは標的集団の95%を含む期待範囲であるβ許容区間(beta tolerance interval, βTI)と同値である。本発表では、95%βTIに信用幅を持たせたβγTIの、変量効果モデルを用いた経時データに対する推定について述べる。
塩田 駿介「診断確度研究のベイズ流標本サイズ設定」
診断確度研究(diagnostic accuracy studies)は、ある診断検査が患者の疾患の有無を正しく判別できるかどうかを評価する研究である。診断確度研究の主な尺度は感度と特異度であり、これらの尺度を適切な精度で推定するためには研究実施前の標本サイズ設定が重要である。本発表では、感度パラメータおよび特異度パラメータに解析事前分布とデザイン事前分布、有病割合パラメータにデザイン事前分布を適用した事前予測確率に基づくベイズ流アプローチについての検討内容を報告する。
堀口 剛「生存時間アウトカムの単群試験におけるベイズ流サンプルサイズ設計の検討」
全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)などのイベントまでの時間(time-to-event)をアウトカムとした単群臨床試験におけるベイズ流サンプルサイズ設計を考える。具体的には、事前予測確率に基づくアプローチ(Teramukai et al. 2012)を比例ハザード性に基づく方法(Wu et al. 2021)を利用することで生存時間アウトカムに拡張する。発表では、サンプルサイズの計算方法を数値例とともに示す。
内藤 あかり「区間打ち切りデータを用いた予測モデルの構築と評価」
医学研究において予測モデルは疾患の診断や予後の予測に有用である。予測モデルの評価指標としてしばしば用いられる、イベント発生までの時間を用いたモデル構築および評価の一般的な手法では、右側打ち切りデータを考慮されているが区間打ち切りデータについては考慮されていない。本発表では、まず右側打ち切りデータのモデル構築と評価手法について概説し、次に区間打ち切りデータへの適用について説明する。さらに、動機となった事例を用いた実データ解析の結果を紹介する。
手良向 聡「適応的ランダム化の方法と最近の議論」
臨床試験におけるランダム化の方法は、固定的ランダム化(Fixed Randomization)と適応的ランダム化(AR:Adaptive Randomization)に大別される。ARは、何に従って割付確率を変動させるかによって、偏コインデザイン、共変量適応的ランダム化、反応適応的ランダム化などに分類される。本発表では、ARの代表的な方法を概説し、とくに反応適応的ランダム化に関する最近の議論について紹介する。
中田 美津子「頻度流中間解析における無効中止基準の設定方法」
有効となる可能性の少ない試験を中間解析において中止することは、臨床試験の効率化の面から望ましい。頻度流の無効中止は中間解析時の条件付き検出力が閾値を超えないことにより決定されるが、その際TypeIエラーは減少するが、TypeIIエラーは増大するおそれがある。本発表ではTypeIおよびTypeIIエラーを適正に保ったうえでの条件付き検出力の算出法を紹介する。
堀口 剛「日本人男性における前立腺がん発症予測モデルの開発」
前立腺がんを発症すると、正常な前立腺を持つ健康な男性に比べPSAが多く発現するため、血清PSA値が上昇する。しかし、1時点でのPSAの測定は、偽陽性所見をもたらす可能性があるため、2時点以上で測定されたPSAデータに基づいて計算されるPSA変化率を用いた前立腺がんの予測が提案されている。本発表では、PSA変化の指標を用いた前立腺がん発症予測モデルの開発について、その方法と結果を紹介する。
内藤 あかり「個人内の相関を考慮した解析手法の概説」
t検定や一般線形モデルなどの一般的な統計解析手法では、すべてのアウトカムデータデータは互いに独立であると仮定されている。しかし、反復測定データや両眼、両脚のデータ等では、同じ個人内のデータは相関しており独立でないと考えられる。したがって、これらのデータを独立であると仮定した手法で解析した場合、結果に影響が出る場合がある。本発表では、個人内の相関を考慮した解析手法をいくつか概説する。
塩田 駿介「診断確度研究のベイズ流標本サイズ設定」
診断確度研究のベイズ流標本設定に関する検討内容を報告する。感度パラメータに解析事前分布とデザイン事前分布を、有病割合パラメータにデザイン事前分布をそれぞれ導入した。目標値を超える事後確率および事前予測確率からベイズ流検出力を求め、標本サイズを決定した。 数値実験の結果、デザイン事前分布の平均固定した場合、分散が小さくなるほど標本サイズは減少した。また、特異度パラメータを考慮する方法や、デザイン事前分布の等裾信用区間を指定する方法についても報告する。
小城 一翔「TRIPOD声明チェックリストの概説」
臨床予測モデルは、複数の予測因子を用いて、ある時点での疾患の有無や将来の特定のイベント発生の有無を予測するツールである。2015年、臨床予測モデルに関する報告を改善するためにTRIPOD声明(個別の予後や診断に関する多変量予測モデルの透明性のある報告のためのガイドライン)が発表され、そこには22のチェックリストが含まれた。本発表では、これらのチェックリストについて概説する。
山本 景一
横田 勲
当教室では学内で以下の講義を担当しております。
鴨川統計集会を参照してください。
生物統計学分野における最先端の研究について講義・演習を行う。
医学研究の統計的方法論について課題を設定し、文献レビュー、既存手法の整理、新規手法の開発・提案などを行えるように指導する。また、医学研究データの統計解析に基づいて、予後因子の同定、予後指標の構築、予防・診断・治療効果の推定を正しい方法で行えるように指導する。
医学研究において頻度流統計学(主に統計的仮説検定、P値、信頼区間)を正しく利用するための心得について解説した上で、将来主流になるであろうベイズ流統計学の基本的考え方と可能性を解説する。
予後/リスク因子解析は観察研究等のデータから重要な情報を得る基本的手法の1つである。また、患者をリスクグループに分類する臨床予測モデルは臨床に有用なツールとなり得る。本講義では、予後/リスク因子解析および臨床予測モデル構築の方法論を基礎から解説する。
5/17 4限 (中田) 北臨床講義室、 10/11 3限(中田) 北臨床講義室
臨床研究およびメタアナリシスの方法論および統計学的推論の基本的考え方を理解する。
臨床試験論文を正しく読むために、CONSORT声明(臨床試験報告ガイダンス)に基づいて試験デザイン、統計解析手法、結果の解釈などについて指導する。
研究計画の方法として、臨床研究(臨床試験・観察研究)の方法論を理解した上で、研究実施計画書の概要が作成できることを目標とする。統計解析の方法として、データの適切な要約と視覚化の仕方、統計手法を正しく理解した上で、研究デザインおよびデータに対応した統計解析が行えることを目標とする。
生物統計学は、臨床・疫学研究の方法論の基礎となる学問である。臨床・疫学研究の計画・デザインの段階から統計解析・報告の段階まで、生物統計学の知識とその活用が必須となる。本講義では、数学的な厳密性を保ちつつ、実践における有用性を重視して、生物統計学に基づく科学(ヘルスデータサイエンス)の考え方を講義する。
1. 10/10 | 3限 | 臨床研究と生物統計学(手良向) |
2. 10/10 | 4限 | データの記述と推測(中田) |
3. 10/17 | 3限 | 頻度流統計学とベイズ流統計学(堀口) |
4. 10/17 | 4限 | 2群の比較(中田) |
5. 10/24 | 3限 | 分散分析と一般線形モデル(中田) |
6. 10/24 | 4限 | 交絡バイアスとその調整(松山教授・非常勤講師) |
7. 11/7 | 3限 | 生存時間解析(堀口) |
8. 11/7 | 4限 | ロジスティック回帰分析とコックス回帰分析(手良向) |
6. 5/17 | 4限 | 観察研究デザイン (中田) | |
7. 6/7 | 3限 | 臨床試験デザイン(1)(堀口) | |
8. 6/7 | 4限 | 臨床試験デザイン(2)(堀口) | |
20. 10/4 | 4限 | 評価尺度の信頼性と妥当性(中田) | |
21. 10/11 | 3限 | メタアナリシス・費用効果分析 (中田) | |
22. 10/11 | 4限 | 診断法の統計的評価(講義の確認テスト)(手良向) |
臨床試験のデザイン、および確率、統計学、AIの関係について講義する。