京都府立医科大学 生物統計学教室は臨床・疫学研究の計画・実施、データ信頼性確保を行っています。

京都府立医科大学 大学院医学研究科生物統計学 医学部医学科生物統計学教室 京都府立医科大学 研究開発・質管理向上統合センター 生物統計・データマネージメント部門

教室・部門紹介

生物統計学教室

生物統計学教室(Department of Biostatistics)は2014年6月に創設されました。2014年11月には「研究開発・質管理向上統合センター(略称:研究統合センター)」が創設され、当教室は、その1部門である「生物統計・データマネージメント部門」を担当してきました。2019年4月からは「附属病院臨床研究推進センター(CTREC)データサイエンス部門」と名称変更しましたが、引き続き研究支援、データの信頼性確保などに従事しています。

生物統計学とは

農学、生態学、進化学、生化学、ゲノム情報学などの生物科学分野から、主に動物や人を対象とした医歯薬学・看護学分野まで幅広い分野の統計学的課題を扱う学問です。医歯薬・看護学分野では、医薬品・医療機器等の承認審査に重要な役割を担っており、臨床・疫学研究の方法論(デザインおよびデータ解析)に大きく貢献しています。しかしながら、我が国において大学院医学研究科・公衆衛生学研究科に生物統計学講座を有するのは本学を含め20大学程度であり、欧米、さらには中国や韓国に比べても教育機関が極めて少ないことから、近年は人材不足が大きな課題となっています。

臨床・疫学研究に携わる生物統計専門家は日本計量生物学会(1979年設立)を主な活動の場としています。「臨床研究に関する日本計量生物学会声明(2013年9月)」では、 『1998 年に日米欧医薬品規制調和会議(ICH)ガイドライン「臨床試験のための統計的原則」における「適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家」は、単に臨床試験の統計業務に長けているのではなく、臨床試験そのものに関する専門家でもあり、このような専門家が参加していない臨床試験には科学的に問題があるものが多いと言わざるを得ません。本学会では、

  1. 臨床試験、臨床研究には適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家の計画段階からの実質的な関与が必須であること。
  2. そのためには主要な臨床研究機関における生物統計学専門家ポストの設置、および医学部・歯学部・附属病院を有する大学には教育・研究のために生物統計教員の配置を行うこと。

を提言します。』と生物統計専門家の重要性を訴えています。また、本学会は、2017年から試験統計家認定制度を開始し、実務試験統計家(Trial statistician)および責任試験統計家(Senior trial statistician)の認定を行っています。

研究について

4つの研究テーマ別に主な研究内容とその意義を以下に概説します。

1. 臨床・疫学研究のデザインに関する研究

希少疾患などを対象とした小規模臨床試験においては、試験のインテグリティを損なわない範囲で試験デザインを様々な形で工夫し、柔軟な意思決定を行うことによって、より少ないリソースでより多くの情報を得る必要があります。そこで、効率的かつ柔軟性の高い臨床試験デザインを開発するために、ベイズ流統計学 (Bayesian statistics) を活用した方法を研究しています。

主な刊行物

      ・Teramukai S. Bayesian phase II single-arm designs.Frontiers of Biostatistical Methods
        and Applications in Clinical Oncology.Springer, 2017:pp65-84.
      ・Fujikawa K, Teramukai S, Yokota I, Daimon T. A Bayesian basket trial design that borrows
        information across strata based on the similarity between the posterior distributions of
        the response probability. Biometrical Journal 2020;62:330-338.
      ・手良向聡.臨床試験におけるランダム化の意義と限界.計量生物学 2020;41:37-54.

2. データサイエンスに基づく意思決定ツール開発

データアーキテクチャ(情報システムの最適化)、データマネジメント(データの質管理)、データアナリシス(データに基づく意思決定)を3本柱としたデータサイエンスの時代が到来しました。臨床研究、電子カルテ、疾患レジストリなど多種多様なデータソースを統合してリアルタイムに分析・意思決定を行うためには、予測モデル、因果推論などの統計学的方法論が必須です。また、患者さんの意思決定を助けるツール開発も重要です。

3. 臨床・疫学研究のデータ解析手法

リスク因子や予後因子を同定する意義は、主に予防法・治療法開発の手掛りを得ることにあります。予後因子解析は、転帰に影響する因子の同定を目的とする一方、予後指標構築は、転帰を予測する指標の構築、対象のグループ化を目的とします。近年では、個別化医療に向けて治療効果を予測するマーカーの同定を目的とした研究や代替評価項目の妥当性を検証する研究も重要になってきています。目的に応じて最適な統計モデルの構築方法は異なり、多様な視点(臨床的妥当性、統計的妥当性、実用性など)で統計モデルを評価することが重要です。

4. 医療技術開発の基盤整備

新しい医療技術の開発を正しい方法で推進していくためには、臨床研究データの質管理・質保証システムを構築・整備することが重要です。特に、臨床研究の統計解析業務に携わる専門家の質を一定に保つことが不可欠です。日本計量生物学会(http://www.biometrics.gr.jp/)は、2017年から試験統計家認定制度を開始しました。試験統計家は、臨床研究のデザインと解析の科学的・倫理的側面の責任を負う「責任試験統計家」、臨床研究のデザインと解析に関する実務を行う「実務試験統計家」の2区分からなります。

主な刊行物

      ・手良向聡.試験統計家の責任と役割.薬剤疫学 2019;24:79-86.

教育について

統計関連学会連合が策定した「統計学の各分野における教育課程編成上の参照基準(2014年8月)」によると、医歯薬・看護学における統計教育の参照基準の到達目標は、

  1. 医歯薬関連論文や研究計画書の記載事項を読み取る能力
  2. エビデンスに基づき適切な治療や対処法が選択できる能力
  3. 統計ソフトウェアの利用や出力結果を解釈する能力
  4. 生物統計家とのコミュニケーションを図る能力

とされています。

2015年から、医学部医学科では「生物統計学(8コマ)」、「医療統計学(6コマ)」、大学院医学研究科では臨床研究デザインや予後因子解析の講義・演習を担当し、2018年からは大学院保健看護学研究科博士課程「統計方法論特別講義(15コマ)」を担当しています。また、大学院生・教員に対する研究デザイン・統計解析に関するコンサルテーション(年間50~100件)を行っています。

主な刊行物

      ・Guosheng Yin 著. 手良向聡、大門貴志訳.臨床試験デザイン:ベイズ流・頻度流の適応的方法.
       メディカル・パブリケーションズ, 2014.
      ・手良向聡.なぜベイズを使わないのか!? 臨床試験デザインのために.金芳堂, 2017.

臨床研究推進センター データサイエンス部門

臨床試験の実務に精通した生物統計家(試験統計家)及びデータマネジャーが、研究の立案段階から研究者に対して助言・支援を行い、研究計画書作成、データベース構築、症例登録・割付、データマネジメント、中央モニタリング、統計解析及び報告書・論文作成の各段階で、データの質管理・統計解析システムを構築しています。また、生物統計学教室と連携し、研究デザイン策定(評価項目、ランダム化・盲検化、統計的仮説、標本サイズ設定、中間解析計画など)、統計解析手法に関する助言・支援を行っています。

2020年1月

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