当教室では大学院統合医科学専攻の演習として、「鴨川統計集会」(Kamogawa Statistical Conference; KSC)を実施しております。
横田 勲「右側打ち切りが時点生存割合の有効サンプルサイズに与える影響」
生存時間アウトカムをもつ単群臨床試験において、主たる解析では時点生存割合を閾値と比較することが多い。
本研究は、打ち切りが後の時点生存割合の精度に与える影響を有効サンプルサイズの観点で検討した。
Greenwood式に基づく漸近分散とベータ分布をおいた正確な分散の両方において、ある条件の下で、有効サンプルサイズで換算した情報損失の近似式を導出した。
従来のサンプルサイズ設計で用いられる予期される打ち切り例を加えるアプローチは、概ね目標とする検出力を維持できることが判明した。
藤川 桂「層ごとに異なる目標値を設定するベイズ流単群臨床試験デザイン」
疾患の重症度などによって被験者を層別し、層ごとに異なる目標値を設定する2値評価項目・単群臨床試験のデザインを考える。層ごとに独立した解析を実施すると、各層の標本サイズが小さい場合には検出力不足が問題となる。
これを改善するため、層ごとの目標値を考慮した事後分布の類似度に基づき層間で情報借用した上で、有効または無効の判断を行うベイズ流臨床試験デザインを検討し、シミュレーションにより動作特性を評価したので報告する。
中田 美津子「SJS/TEN眼後遺症の予後改善に向けた観察的研究/条件付きロジスティック回帰を用いた併合解析」
スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome: SJS)及び中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis: TEN)は、高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑・びらん・水疱が多発し、表皮の壊死性障害を認める疾患である。SJS/TENの眼合併症に対する疫学調査として、2005-2007年に第1回調査、2008-2010年に第2回調査、2016-2018年に第3回調査が行われた。
本発表では、データ収集方法が類似している第1回調査と第3回調査のデータを年齢・性別・臨床型・被疑薬NSAIDSの有無・発症から発熱までの日数・発症から粘膜症状出現までの日数でマッチングし、条件付きロジスティック回帰分析を用いて全身療法開始病日ならびに発症から眼科初診までの日数が眼後遺症に及ぼす影響を推定した。
堀口 剛「単群試験の生存時間解析におけるベイズ流サンプルサイズ設計の検討」
がんの臨床試験などでは、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)などのイベントまでの時間(time-to-event)をエンドポイントとすることがよくある。また、コストや倫理的な問題から、単群試験デザインが採用されることがある。そのような場合のサンプルサイズ設計については、主に頻度流の方法が提案されてきたが、近年ベイズ流の方法が注目されており、より実用性の高いベイズ流生存時間解析に基づくサンプルサイズ設計の提案を検討している。
特に2つの事前分布を用いた事前予測確率に基づくアプローチについての検討内容を報告する。
内藤あかり「重症牛乳アレルギー児に対する探索的臨床試験におけるベイズ流試験デザインの検討」
重症牛乳アレルギー児に対する安全性の高い治療法として、少量経口免疫療法という治療法が検討されている。まず小規模な単群探索的試験が計画されたが、現段階で実施可能な症例数では既存治療法に対する非劣性を十分な検出力で評価することは困難であった。
そこで、集積できた症例数に応じて段階的な有効性評価が可能な柔軟なベイズ流試験デザインの検討および性能評価を行ったので報告する。
笹川 昌起
周 梦雪
山本 景一
塩田 駿介
深沢 良輔
湯川 有人
安里 言人
宮本 雄気
永井 利樹
尾ノ井 恵佑
木下 大介
的場 弥生
片山 晃久
新山 侑生
当教室では学内で以下の講義を担当しております。
鴨川統計集会を参照してください。
生物統計学分野における最先端の研究について講義・演習を行う。
医学研究の統計的方法論について課題を設定し、文献レビュー、既存手法の整理、新規手法の開発・提案などを行えるように指導する。また、医学研究データの統計解析に基づいて、予後因子の同定、予後指標の構築、予防・診断・治療効果の推定を正しい方法で行えるように指導する。
医学研究において頻度流統計学(主に統計的仮説検定、P値、信頼区間)を正しく利用するための心得について解説した上で、将来主流になるであろうベイズ流統計学の基本的考え方と可能性を解説する。
予後/リスク因子解析は観察研究等のデータから重要な情報を得る基本的手法の1つである。また、患者をリスクグループに分類する臨床予測モデルは臨床に有用なツールとなり得る。本講義では、予後/リスク因子解析および臨床予測モデル構築の方法論を基礎から解説する。
6/1 4限 (藤川)、 10/26 3限(手良向)
臨床研究およびメタアナリシスの方法論および統計学的推論の基本的考え方を理解する。
「統合医科学概論」と合同実施
臨床試験論文を正しく読むために、CONSORT声明(臨床試験報告ガイダンス)に基づいて試験デザイン、統計解析手法、結果の解釈などについて指導する。
研究計画の方法として、臨床研究(臨床試験・観察研究)の方法論を理解した上で、研究実施計画書の概要が作成できることを目標とする。統計解析の方法として、データの適切な要約と視覚化の仕方、統計手法を正しく理解した上で、研究デザインおよびデータに対応した統計解析が行えることを目標とする。
生物統計学は、臨床・疫学研究の方法論の基礎となる学問である。臨床・疫学研究の計画・デザインの段階から統計解析・報告の段階まで、生物統計学の知識とその活用が必須となる。本講義では、数学的な厳密性を保ちつつ、実践における有用性を重視して、生物統計学に基づく科学(ヘルスデータサイエンス)の考え方を講義する。
1. 10/11 | 3限 | 臨床研究と生物統計学(手良向) |
2. 10/11 | 4限 | データの記述と推測(藤川) |
3. 10/18 | 3限 | 頻度流統計学とベイズ流統計学(堀口) |
4. 10/18 | 4限 | 2群の比較(藤川) |
5. 10/25 | 3限 | 分散分析と一般線形モデル(藤川) |
6. 10/25 | 4限 | 交絡バイアスとその調整(松山教授・非常勤講師) |
7. 11/8 | 3限 | 生存時間解析(堀口) |
8. 11/8 | 4限 | ロジスティック回帰分析とコックス回帰分析(手良向) |
6. 6/1 | 4限 | 観察研究デザイン (藤川) | |
7. 6/8 | 3限 | 臨床試験デザイン(1)(堀口) | |
8. 6/8 | 4限 | 臨床試験デザイン(2)(堀口) | |
20. 10/19 | 4限 | 評価尺度の信頼性と妥当性(手良向) | |
21. 10/26 | 3限 | メタアナリシス・費用効果分析 (手良向) | |
22. 10/26 | 4限 | 診断法の統計的評価(講義の確認テスト)(藤川) |